木枯らしが街を吹き抜け、ビルの間を通り抜ける風が耳元で笛のように鳴いている。
駅前の商店街には人々が行き交い、少し早いクリスマスの装飾が目に入った。
僕は缶コーヒーを片手に、寒さでかじかんだ手を時折吐息で温めながら歩いていた。
休日の午後、特にすることもなく外に出てみたが、やはり冷たい空気に心まで凍りそうになる。
「……冬って、なんか切ないよな。」
一人ごちたその瞬間、急に肩にぶつかってきた人影があった。
「あ、ごめんなさいっ!」
慌てて謝るその声に顔を上げると、そこにいたのは大学の同期、咲良だった。
「咲良?」
驚いて名前を呼ぶと、彼女は目を丸くして僕を見た。
肩までの茶髪にニット帽をかぶり、薄手のコートを羽織った彼女は少し震えていた。
「……あ、久しぶり。こんなとこで会うなんて。」
どこか照れたように笑う彼女の顔は、いつも通り可愛い――いや、それ以上に魅力的に見えた。
「久しぶりだな。こんな寒い中で何してるの?」
「えっと……財布、落としちゃって……」
咲良は困ったようにコートのポケットをまさぐりながら答えた。
その仕草がなんだか小動物みたいで、僕は思わず笑ってしまう。
「笑わないでよ! 本当に困ってるんだから!」
彼女がぷくっと頬を膨らませる。
それでもどこか憎めない表情に、僕は手を貸さずにはいられなかった。
「それなら、一緒に探してやるよ。どの辺で落としたかわかる?」
「ほんと? 助かる! たぶん、あっちの商店街の方……」
結局、僕たちは寒さに耐えながら人混みをかき分け、道の隅々まで財布を探し歩くことに。
二人で探し回ること30分。日が沈みかけた街はますます寒さを増し、咲良の頬も耳も赤く染まっている。
「……ごめんね。こんな寒い中、付き合わせちゃって。」
咲良が申し訳なさそうに俯く。
「気にするなよ。それに、こうして久しぶりに会えたんだし、俺は悪くないと思ってるけど?」
軽い調子で言ったつもりだったが、咲良は驚いたように目を見開き、少しだけ頬を赤らめた。
「そ、そんな風に言われると……なんか変な気持ちになる。」
照れ隠しのように視線を逸らす咲良。
その横顔が妙に愛おしく感じられた。
ふと、近くのベンチの下で光るものを見つけた。
「……これ、咲良のじゃないか?」
拾い上げて見せると、咲良は「わぁ!」と声を上げて駆け寄ってきた。
「ほんとだ! これ、私の財布!」
嬉しそうに笑う彼女を見て、僕も安堵の息を吐いた。
「でも、どうしてこんなとこに落ちてたんだろう……?」
咲良が財布を抱きしめながら首を傾げる。
「たぶん、歩いてるときにポケットから滑り落ちたんだろうな。次から気をつけろよ。」
「うん……ほんとにありがとう。もし君がいなかったら、今日ずっと泣いてたかも。」
「泣いてる咲良なんて見たくないな。俺、咲良には笑っててほしいから。」
思わず口にした言葉に、自分でも驚いた。
咲良は目を丸くして僕を見つめる。
「……そんなこと言うなんて、ずるいよ。」
ふいに、彼女が僕の腕を掴んだ。
「この後、時間ある? お礼にご飯でも奢らせて。」
「え、いや、そこまでしてもらうつもりは――」
「いいの! 今日だけは甘えさせてよ!」
咲良の強引さに負けて、僕たちは近くのレストランに入ることになった。
店内は温かな照明に包まれ、窓からはライトアップされた街が見える。
咲良はホットココアを両手で包み込みながら、少し恥ずかしそうに僕を見た。
「……ねえ、ゆうまくんって、なんでそんなに優しいの?」
「え? 俺が?」
「そう。昔から思ってたけど、なんか……特別な感じがする。」
その言葉に、僕は思わず視線を逸らした。
「特別なんかじゃないよ。咲良が困ってたら、放っておけないだけだ。」
「それって……私のこと、大事に思ってくれてるってこと?」
咲良の声が少し震えているのに気づき、僕は彼女の瞳をしっかりと見つめ返した。
「……そうだよ。俺は、ずっと咲良のことが好きだった。」
その瞬間、咲良の瞳から涙がこぼれた。
「……うそ。ずっと、そんなこと……気づかなかった。」
「言えなかったんだ。でも、今日こうして一緒に過ごして、やっぱり俺にとって咲良は――」
咲良が静かに立ち上がり、テーブル越しに僕の手を握った。
「……私も、ゆうまくんのことが好き。」
その言葉に、僕の胸は高鳴り、自然と二人の距離が縮まった。
店を出たあと、冷たい夜風が二人を包む。
咲良は小さく震えながら、僕の袖をそっと掴んだ。
「……寒いね。」
「咲良、上着貸そうか?」
「いいよ、君が風邪ひいたら困るし。」
そう言いながらも、彼女は僕にぴったりと寄り添ってきた。
「……今日は、ありがとう。いろいろ助けてもらってばっかりだね。」
「そんなことないさ。俺も楽しかったよ。」
咲良が少し頬を染めて、下を向く。
「……ねえ、ちょっとだけ寄っていかない?」
突然の申し出に、僕は少し驚きながらも、彼女の瞳を見つめた。
その中には、少しの不安と、期待のような感情が浮かんでいる。
「本当にいいのか?」
「うん……今日くらいは甘えたいな。」
咲良の部屋に入ると、暖かい空気が二人を包み込む。
彼女はストーブのスイッチを入れ、手早くテーブルに飲み物を用意した。
「こんなとこ、あんまり人呼んだことないんだ。」
彼女が恥ずかしそうに笑う。
「けど……ゆうまくんにならいいかなって、思った。」
その言葉に、僕の胸が高鳴る。
自然と二人の距離が近づき、彼女の顔がすぐそばにあることに気づく。
「咲良……」
「……何?」
彼女の頬が赤く染まり、視線が揺れる。その瞬間、僕はもう言葉を選ぶ余裕を失っていた。
「咲良、好きだ。」
彼女の肩を引き寄せ、そのまま唇を重ねた。
柔らかな唇の感触を味わいながら、僕は自分の鼓動がどんどん速くなるのを感じる。
彼女は一瞬驚いた表情を見せたが、やがてそっと目を閉じて僕に身を任せる。
その時間がどのくらい続いたのかわからないほど、僕たちは夢中でお互いを求め合った。
「……ごめん。いきなりこんなことして。」
少し落ち着きを取り戻したころ、僕はそうつぶやいた。
しかし咲良は首を横に振り、ゆっくりと微笑んだ。
「ううん、嬉しかったよ。ゆうまくんも、私のこと……好きって言ってくれたし。」
僕は恥ずかしさを誤魔化すようにコーヒーを口に含む。
しかし咲良は僕の手を取り、自分の胸元に引き寄せた。
「……ね、もう一回……」
熱を帯びた目で見つめられると、断ることなどできなかった。
今度は僕の方から唇を重ねる。
そしてそのまま彼女をベッドに押し倒した。
「……ここでするの?」
少し戸惑った様子を見せながらも、咲良の瞳には期待の色が滲んでいた。
「ダメか?」
「……ううん、いいよ。」
彼女が小さくうなずくのを確認し、僕は再び唇を重ねた。
先ほどよりも激しく求め合ううちに、お互いの理性は溶けていき、気が付けば二人とも一糸まとわぬ姿になっていた。
「ゆうまくん……」
咲良が僕の首に手を回す。
彼女の熱っぽい吐息を感じながら、僕は優しく抱きしめた。
「咲良、好きだよ。」
耳元で囁くと、彼女はくすぐったそうに身を捩った。
そのまま首筋から鎖骨へと舌を這わせると、彼女の体が小さく震える。
「……私も好き。ゆうまくんのこと、大好き……」
その言葉が嬉しくて、僕は何度も彼女に口づけをする。
ゆっくりと手を下に滑らせていった。
指先が胸に触れると、咲良は小さく声を上げた。
「あっ……」
柔らかな膨らみを優しく揉みしだくうちに先端は硬くなっていた。
「ゆうまくん……もっと強くしても、いいよ。」
その言葉に促されるように、僕は指先に力を込めた。
「んっ……!」
咲良が切なげな声を上げる。
その声に誘われるように、僕は彼女の胸にしゃぶりついた。
「あっ! ゆうまくん……それ、すごいっ……」
舌先で転がすように刺激を与えると、咲良はビクビクと体を震わせた。
「はぁ……んぁっ!」
彼女の声が徐々に大きくなっていく。
その声を聞くたびに、僕の興奮も高まっていった。
「咲良、そろそろいいか?」
耳元で尋ねると、彼女は小さくうなずいて脚を開いた。
彼女の秘所はすでに潤っていて、僕を受け入れる準備が整っていた。
僕はズボンとパンツを脱ぎ捨てると同時に、その入り口へ自分のモノをあてがった。
その瞬間、咲良はビクリと体を震わせる。
「……怖い?」
彼女が首を横に振るのを見て、僕はそっと腰を進めた。
「うっ……ああぁっ!」
咲良が苦しそうな声を上げる。
そんな彼女を労わるように髪を撫でると、少しずつ奥へと侵入していくのがわかった。
やがて根本まですっぽりと収まると、僕は彼女に覆いかぶさるような形で抱きしめた。
「……全部入ったよ。」
耳元で囁くと、彼女は涙目で僕の目を見つめた。
「ゆうまくんの……すごく熱い……」
その言葉にますます興奮した僕はゆっくりと腰を動かし始めた。
「あ、あぁっ……ゆうまくんっ……!」
咲良が切なげに僕の名前を呼ぶたび、愛おしさが込み上げてくる。
僕はさらに深く彼女を求め続けた。
「咲良……もう、出るっ……!」
「……ゆうまくん、大好き……」
彼女が僕の胸に顔をうずめながらつぶやくのを聞きながら、僕は激しく腰を動かした。
そしてそのまま彼女の中で果ててしまった。
「あ、あぁ……」
ぐったりとベッドに横たわりながら、僕は脱力していた。
咲良はそんな僕を見てクスクスと笑っている。
「ゆうまくんって意外と激しいんだね。」
「ごめん……痛かったか?」
慌てて謝ると、彼女は首を横に振った。
「……ううん、嬉しかったよ。私のこと、ちゃんと求めてくれてるんだなってわかったから。」
そう言って笑う彼女の笑顔はとても眩しくて、僕は思わず見惚れてしまった。
――夜は深まり、窓の外は静寂に包まれている。
咲良は毛布に包まれながら、僕の隣で安らかな寝息を立てていた。
「……咲良。」
そっと彼女の髪に触れると、ピクリと体が動き、薄く瞼を開ける。
「……もう、朝?」
「まだだよ。少し休んでろ。」
咲良はふわりと微笑み、僕の胸に顔を埋めた。
「なんだか、幸せすぎて怖いな……」
「どうして?」
「こんな風に誰かと一緒にいられるなんて、今まで想像もできなかったから。」
彼女の声には、どこか切なさが混じっている。
「咲良、大丈夫だよ。俺がいるから。」
その言葉に、彼女は少しだけ泣き笑いのような表情を浮かべる。
そして、そっと囁いた。
「……ありがとう。」
二人の間に言葉はなくても、心が繋がっていることを感じる瞬間だった。
おわり
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